みなさんは神戸にジャイアントパンダがいたことを知っていましたか?
神戸の王子動物園にタンタンというジャイアントパンダがいました。
私がタンタンのことを知ったのは、2020年にタンタンが中国へ返還される際にNHKで放送された特集番組でした。
そこで一目惚れ。
その後、上野動物園のシャオシャオ・レイレイが産まれ、さらにYouTubeでアドベンチャーワールドの楓浜を知って、パンダ沼にはまりました。
さて、私をパンダ沼にはまるきっかけをくれた王子動物園のタンタンですが、2021年に発症した心臓疾患の影響により2024年3月31日に永眠しました。
残念ながら私は1度も会うことができませんでしたが、今回はタンタンの追悼記事をお送りします。
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本記事で使用している写真はPANDA PLAZAで発売されたタンタンカレンダー2023・2024を撮影したものです
タンタンはこんなジャイアントパンダ
タンタン(旦旦)は、繁殖研究と阪神淡路大震災後の神戸を勇気づけるために、パートナーのコウコウ(興興)と一緒に王子動物園へ来神。
タンタンの本名は爽爽(シュアンシュアン)であり、タンタンは愛称。
なので、飼育員さん達は「ソウソウ」と呼んでいます。
シュアンシュアンという本名は、日本人には発音が難しいためです。
また、パートナーのコウコウは繁殖不可と判断され(メスだったので)、別のオスが来神。
2代目のオスはコウコウ(興興)の名を引き継ぎました。
その後タンタンとお見合いをしましたが、パンダは人間と同じくらい相性の良し悪しが厳しく、タンタンはコウコウが気に入らなかったのか、「ワン」と吠えて威嚇したそう。
そのため人工授精を実施。
タンタンは妊娠しましたが、1頭目は死産。2頭目は出産して3日後に死去。
追い打ちをかけるように、3回目の繁殖に向けて人工授精処置中にコウコウが麻酔から覚める途中で死去。
その後、神戸市はオスを送って欲しいと交渉をしましたが、タンタンに骨格的な問題があったことからオスを送ってもらえませんでした。
タンタンの骨格的な問題とは、手足の長さ。
この手足の長さが起因して人間のように座って食事をすることから、「神戸のお嬢様」と親しまれました。
一方で、この手足の長さが育児には向いていなかったのです。
赤ちゃんを何度も落としてしまい、授乳することができず赤ちゃんパンダが餓死することになってしまいました。
しかし、タンタンは赤ちゃんのことを忘れられず、発情期や出産時期になると育児をするかのようにタケノコやにんじんを抱っこするようになりました。
ジャイアントパンダは単体で行動する動物ですが、タンタンは仔ども好きだったのかも知れません。
唯一無二のフォルムが愛しい
タンタンは控えめな手足に加え、体格も小柄でよく仔パンダに間違えられていたそう。
体長は110㎝。ジャイアントパンダの全長は120cm~150cmなのでかなり小柄ですね。
体重は健康な時で80キロ後半。
また、大人のジャイアントパンダは体重100キロ前後(メス)なのに対して、タンタンの体重は健康な時で80キロ台。
現在日本にいるジャイアントパンダでいうと、アドベンチャーワールドの楓浜(3歳)の体重が96キロぐらいなので(2024/04/01時点)、3歳の楓浜より小柄なんですね。
実際に会ったことがないので想像ですが・・・(T_T)
タンタンのチャームポイントは小柄な体型だけではありません。
丸い顔と丸い耳、♥型の鼻に♥型のお尻。
そしてアイパッチは、桜の花びら型。
口角がいつも上がっていて、笑っているような愛らしい顔をしています。
とてもかわいらしい顔をしているタンタンですが、X(旧Twitter)やYouTubeでは豊かな表情を見せてくれています。
ぜひ、チェックしてみてください。
絵本のような優しい世界
さらにタンタンの魅力を最大限に引き出してくれていたのが、飼育員さん達や王子動物園が生み出す雰囲気です。
タンタンが櫓で食事をするときには、ニセアカシアの木にもたれて食事をしていましたが、その光景は絵本のような風景でした。
この櫓を作った飼育員さん達や王子動物園の風景が生んだ光景です。
また、タンタンといえばタイヤです。
タイヤにちょこんと座って食事する姿はアニメのよう。
そして、タンタンの食事姿といえば「おにぎり」です。
室内ではファンから「コーキさん」と呼ばれていた体重計にもたれて、お庭では「お出迎え石」や「テーブル」「カウンター」と呼ばれていた岩にもたれて食事をしていました。
体重計や岩にもたれて食事をすると、ファンに背中を向ける形になりますが、その姿は「おにぎり」。
耳だけピクピク動いていて、とてもかわいい「おにぎりタンタン」でしたね。
さらに、おねだりをする時の「圧タン」ポーズはSNSで大人気。
私も大好きでした。
どんな姿もカワイイ!!それがタンタンの魅力です。
以前も紹介しましたが、U-NEXTではNHKで放送された『ごろごろパンダ日記』シリーズを見ることができます。
しかも、30日無料期間中に全話視聴可能です。
初めてタンタンを知った方は一度見てくださいね。
とーっても賢いタンタン
タンタンを語る上で外せないのが「間接飼育」と「ハズバンダリートレーニング」です。
間接飼育というのは、ケージ越しではなく一定の距離を保ちながら動物を飼育する方法。
ジャイアントパンダでこの飼育方法を行っているのは、日本では王子動物園だけでした。
SNSを見るとケージのない状態で、飼育員さんがタンタンに直接タケノコを渡したり、サトウキビジュースを飲ませている動画を見つけることができます。
また、NHKのごろごろパンダ日記『ひまわりとタンタンの約束』では、飼育員さんが「入るよー」と声をかけて、タンタンが寝ていた部屋へ普通に入る姿が放送されていました。
かわいらしい姿なので忘れがちですが、ジャイアントパンダはクマです。
怒ったジャイアントパンダにパンチされたら大人の男でも吹っ飛ぶと聞いたことがあります。
そのような猛獣とケージ越しではなく接することができるのは、飼育員さんとタンタンとの絆が強いからでしょう。
そんな絆の深さを感じるところも、私がタンタンに魅了された要因の1つです。
その絆の強さを生んだのが、ハズバンダリートレーニングです。
麻酔を使ったことでオスのコウコウを亡くした経験から、取り入れられたハズバンダリートレーニングは、動物に麻酔を使わずに健康診断を行えるように訓練する方法です。
コウコウを亡くした後、タンタンまで亡くすわけに行かないと飼育員さん達が取り入れたこのトレーニングの種類は数十種類にも及ぶといわれています。
タンタンがトレーニングをマスターしたことで、目の病気や心臓の不調を早い段階で見つけることができました。
このトレーニングを行った結果、タンタンは長時間の心電図検査やレントゲン検査、麻酔無しで腹水を抜く治療まで行うことができたのです。
アドベンチャーワールドでタンタンより年上の永明を育てた飼育員さんは、「タンタンのすごいところは、レントゲン検査でパンダを数㎝動かさないといけないところに対応できること」と言っていました。
人間でもレントゲン検査で数㎝調整するのは難しいですが、タンタンはちゃんと対応できたのです。
賢い!!
おまけにタンタンは遊び道具のタイヤを使って背もたれ付きタイヤイスを作ったこともあります。
スゴイですよ~。
まるで座椅子に座っていいるような状態になっています。
ぜひ、王子動物園公式Xで探してみてくださいね。
『ごろごろパンダ日記シリーズ』のDVDが発売決定!!
2024年9月16日はタンタン29歳の誕生日でした。
この日は神戸市でタンタン追悼事業が展開され、街中がタンタン一色に!
そして、X(旧Twitter)でタンタンラヴァーズやジャイアントパンダファンのみなさんが頑張ったおかげで、NHKスクエアさんに願いが通じ、『ごろごろパンダ日記シリーズ』のDVDが発売されることになりました。(詳細はこちら)
もちろん、早速予約しました。
発売日は2024年12月20日頃なので、今年のクリスマスはタンタンサンタさんが来てくれそうです!
また、タンタンの本が続々出版されています。
その中から注目の2冊をご紹介します。
1冊目は、毎週水曜日のお楽しみ「水曜日のお嬢様」が本になりました。
パンダライターの二木繁美さんによる記事は、わかりやすい言葉で書かれているので、読書が苦手な人でも楽しく読むことができますよ。
また、王子動物園公式Xの写真も掲載されています。
2冊目は、まだ発売前なので感想は言えませんが、先にご報告した『ごろごろパンダ日記シリーズ』のプロデューサーによる書籍版『ごろごろパンダ日記』です。
今日現在(2024/09/17)の情報ですと、表紙はイラストレーターの中村愛さんらしいです。
中村愛さんはシロクマを中心にイラストを描いていらっしゃいますが、時々ジャイアントパンダを描いています。
個体別の特徴を捉えていて、絵が優しいのでタンタンの雰囲気にピッタリだと思います。
今から出来上がりが楽しみです。
心の支えになってくれたタンタンに今、思うこと
私がタンタンの死去を知ったのは旅行先でした。
Xではタンタンラバーズの皆さんが悲しみのポストをしていて、でも信じたくない気持ちの方が強かったです。
それでも、翌日には献花台が設置されて溢れんばかりの花が供えられて行く様子を、Xで見守ることしかできませんでした。
信じがたい思いを抱えたまま、旅行をして帰宅後に王子動物園の会見をYouTubeで見て、関連記事でタンタンの最後を知りました。
産まれ育った故郷を帰ることは叶いませんでした。
しかし、来神してから24年のうち15.6年一緒だった飼育員さん達に看取られたので、タンタンは幸せだったと思います。
また、飼育員さん達にとっても、中国へ返還された後で心臓疾患が発覚して亡くなったことを聞くより、最後まで世話をすることができたのも良かったのではないかと思います。
私がタンタンに惹かれたのは、かわいらしさに加えて自分が難病だったからだと思います。
確かに見た目やフォルム、表情豊かなところや飼育員さん達との絆などなど、タンタンは見ているだけで癒やされる存在でした。
そこにタンタンに心臓疾患が発覚してからは、訳も分からないのに検査や注射をされ、時には診察を放棄しながらも、けなげに治療に取り組む姿に励まされましたものです。
特に、王子動物園公式Xで発信されていた『今日のタンタン』では、飼育員さん達との微笑ましいやり取りが、日々のリラックスタイムになっていました。
飼育員さん達をはじめ、チームタンタンの皆様が忙しい中SNSを発信し続けてくれてありがとうございます。
今はもう旅だってしまったタンタン。
でもずっと一緒にいてくれると信じています。
尾崎亜美さんの曲『月の魔法』にはこんな歌詞があります。
たとえ 何万粒の涙
流すことになっても
いっしょには歩けない
弱虫じゃないからね
甘い想い出たちを
捨ててなんかいかない
ねぇ moom
(略)
たとえ 何万粒の涙
流すことになっても
生命の底ぢからが
きっと わたしのことを動かしてくれるだろう
純粋(ピュア)なものにむかって
(略)
掌を そっと 開ければ
Moon light, moon light
そこにあるよと
教えてくれる
(出典:Uta-Net https://www.uta-net.com/song/115451/)
この曲は別れの曲ですが、最後は前向きな終わり方をしています。(個人的な感想です)
タンタンは治療しながら生命の底力を見せてくれましたよね。
これからもタンタンも近くにいてくれるし、いつかまた会えるでしょう。
その時まで、#また明日ね。