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近年、読書離れが叫ばれて久しいですね。
私は10代のうちに読んで欲しい本として三浦綾子著『氷点』を挙げます。
この本は10代のうちはヒロインに感情移入、20代後半からは両親に感情移入できます。
つまり、それだけ登場人物の心情を細かく丁寧に描いているのです。
私がこの本を読むきっかけになったのは、この本をスペシャルドラマ化した時の主題歌が印象に残ったからです。
もし、読書感想文で本選びに迷っていたら、ドラマ化された時の主題歌で決めるのもいいですよ。
なぜ『氷点』がオススメなのか?
他の記事でも『氷点』のことを書いています。(参照:「赦し」の意味が理解できた日のこと)
なぜ、そんなに推すのか。
そもそもどんな話なの?
これらの疑問に答えたいと思います。
『氷点』の簡単なあらすじ
エリート医師の父、美人で良妻賢母の母、優秀な兄、かわいい娘の陽子、誰もがうらやむ理想的な一家には大きな秘密があった。
陽子にはルリ子という姉がいたが、母が父に内緒で父の同僚と会っていた間に殺されてしまう。
この事実を知った父はルリ子を殺した犯人の子を養女として育てさせることを思いつく。
娘を殺した犯人の子と知らずに育てる母、かわいがる兄。
それぞれが秘密を知った時・・・・・・。
そして、陽子自身が自分の秘密を知った時・・・・・・。
それぞれ何を思い、どんな行動をするのか。
現在をテーマにした三浦綾子処女作。
テーマは難しいが描写、ストーリーの展開がすごい
前述したように、登場人物それぞれの心情が細かく描写されています。
また、ヒロインが小学生なので女性は感情移入もしやすいです。
誰もが経験したことのある視点で描かれています。
私は『青い鳥文庫』から『氷点』にジャンプアップしたので、「人間ってこうだよね」と衝撃を受けました。あの衝撃は今でも忘れられません。
三浦綾子といえば遠藤周作と同じキリスト教作家で有名です。
しかし、キリスト教のことがわからなくても十分読解は可能です。また、時代が古いので若い人には難しい部分もありますが、家族の話なので時代背景が多少わからなくても読むことが可能です。
「原罪」をテーマにしていますが、このテーマを理解できる人は学者やキリスト教の方々でしょう。
大学生が論文で『氷点』を扱うのなら、テーマへの理解は必要ですが読書を楽しむのであれば、そこまで考えなくても良いと思います。
登場人物の心情とストーリー展開を楽しんで欲しいです。
サスペンスではありませんが、サスペンスのようにストーリーが展開していきます。
三浦綾子作品のスゴさの1つには、ストーリー展開もあります。
『氷点』以外だと『銃口』もストーリー展開がスゴイです。
『銃口』NHKでドラマ化されたものを最初に観ました。毎回、目が離せない展開でドラマを観るのが楽しみでした。
ドラマを観てから本を読んだので、時代背景もすんなり入れましたが、最初は少し難しいかも知れません。
ですが、戦争を題材とした本を探している方は『銃口』をおすすめします。
戦争の悲惨さや平和への思いも含まれた作品です。
なぜ三浦綾子作品を推すのか
結論からいえば「人生の岐路で助けられた」からです。
三浦綾子氏は脊椎カリエスからパーキンソン病まで、さまざまな病と闘ってきた方でした。
三浦綾子氏のエッセイはあまり好きではないので読んでいませんが、文庫本の書評で人生を知り、闘病中だった自分でも小説家を目指せると勇気をもらいました。
さらに、体のだるさや難聴で学校生活がままならなかった私は、入試の勉強もそこそこしかできず推薦や人柄重視の試験を選択。
面接で好きな本に必ず『氷点』を挙げると、面接官から毎回「素晴らしい」と絶賛。
特にキリスト教系の学校だと、オープンキャンパスでそんな話になると「必ず受験してください」と言われました。
ただ、実際に進学した先はこの『氷点』があまり響かなかった学校ですが・・・・・・。
それでも、進学先で友達ができたきっけかけになったこともあり、いろんな場面で助けてくれた本です。
歴代ドラマ主題歌の紹介と考察
ここからはドラマ化された『氷点』の主題歌を紹介します。
読んでみたいけれど難しそう。
どんな世界観かわからない。
もう一押し欲しい。
読書感想文や現代文学のレポートで困っている方は、読んでみてください。
玉置浩二 氷点 /作詞:並河祥太 作曲:玉置浩二
1989年スペシャルドラマの主題歌です。
短い歌詞とメロディーに『氷点』の世界とテーマ(ドラマ版)が濃縮された1曲。
J-POPというより歌謡曲ですね。
三浦綾子氏と玉置浩二氏は同じ旭川出身であり、『氷点』の舞台も旭川。
日本人アーティストの中でも確かな歌唱力持つ、玉置浩二氏が歌うことで楽曲に奥行きが与えられています。
特に歌詞のセリフ部分は、ヒロインが母に向かって語りかけるようで切ない。
玉置浩二 氷点鬼束ちひろ infection /作詞作曲:鬼束ちひろ
2001年の連続ドラマ『氷点2001』の主題歌。ところが、歌詞の内容が直前にあった9.11を想起されるということで、プロモーションどころか、ドラマでも一切流れず。(流れてても大音量にしないと聞こえない)
幻の主題歌です。
私自身の中では、1番等身大のヒロインを表現している曲だと思う。
特に出だしの歌詞が秀逸だと思う
ヒロインは良い子でいようとして、自分に対して嘘を付く。
私は難聴を隠して健常者の振りをして嘘をついていた。
だからこそ
”「何とか上手く答えなくちゃ」 そしてこの舌に雑草が増えて行く」”
この出だしが胸に響いた。
鬼束ちひろの歌詞は彼女独特の表現が多いので、私自身流の解釈を短く紹介します。
infaction自己流解釈
貴方が望む返事をしなくちゃ
私は自分に嘘をつく
私の後ろに映る人が
貴方の本性を暴いてしまう
信じていたモノを失った時
私を支えていたものがバラバラになって
私は私でなくなる
少女の潔癖さで生きてきたけれど
本当は臆病で 目を背けていただけ
私の正しさは崩れていくばかり
周りが気がつきはじめた 真実がくすぶっている
隠された真実を確かめなければ
鬼束ちひろ infection元ちとせ 六花譚(ロッカバラッド)/作詞 HUSSY_R 作曲 田鹿祐一
2006年のスペシャルドラマの主題歌。
このスペシャルドラマでは『氷点』だけではなく『続・氷点』までをドラマ化した。
初めにこの歌を聴いた時は『氷点』のラストシーンを描いた作品だと思っていた。
何度か聞いているうちに、他の登場人物が『氷点』ラストのヒロインを思っている心情にも受け取れる。
元ちとせ氏は奄美の歌姫と呼ばれ、歌声もどこか明るい。
歌う時に息を多く使うことで『氷点』の世界観を表現している。
元ちとせ 六花譚